確定拠出年金制度の改正をめぐる今後の展望(第2回)

概要

 【第1回】では、今回の改正の底流に流れる背景について説明したが、一言で言えば、「公的年金が細る中、やらざるを得ない改正」であるということです。
日本人の定年退職後の生活(老後生活)を相応の水準とするためには、
  ・まず定年後の雇用を活性化させる(雇用は老後生活の最大の防御)
  ・公的年金を補完する企業年金を、中小企業を含め極力広範囲に対象者を広げる
  ・それに加えて、全国民を対象に自助努力の仕組みを活性化する
という政策を取る他にないわけで、下の2つが今回改正のポイントとなる。

 今まで企業年金は、適年、厚生年金基金、DB,DCとそれぞれ独立した法律の建付けで運営されてきた。前回にも述べたが、やりたい企業が好きに制度を選択して導入すれば良かったからである。つまり、労使合意のもと「やりたいようにやってください」というものだった訳である。このような労使合意に基づく“自由な設計”という考え方は、退職一時金制度を源泉とする日本の企業年金制度の世界において発足以来綿々と生き続けてきた。結果として、企業年金を持つ余裕があり、社員の老後まで面倒を見たい大企業が推進の中心となっていったのだが、大企業の社員は全労働者からみればほんの一部に過ぎない。
 このままでは非常に拙い事になるのは目に見えている。
同様に、会社を辞めれば退職一時金という”お金“が貰えるというのは、支払う側の事業主も、受け取る側の社員も当然のこととしてきた(歴史的に日本の企業年金制度はそれ以前に一般化していた退職一時金制度をルーツにしている)。
 しかし、退職した際に、仮にそれが定年退職であっても、一時金で受領したお金が老後資金として有効に機能する保証はない。まして中途退職の場合、折角貯まっていた老後資金を使ってしまうリスクはかなり大きいと思われる。

全文閲覧
こちらの文書全文はPDFにてご覧頂けます。